北野 武監督第3作
1991年10月公開


(C)1991 東通/オフィス北野

CAST
真木蔵人,大島弘子,河原さぶ,藤原稔三,寺島 進,鍵本景子,小磯勝弥,松井俊雄 ほか

STAFF
監督・企画・脚本・編集:北野 武/製作:館 幸雄/プロデューサー:森 昌行/協力プロデューサー:吉田多喜男/音楽監督:久石 譲/撮影:柳島克己/照明:高屋 齋/美術:佐々木 修/録音:堀内戦治/監督補:天間敏広/記録:中田秀子/製作担当:小宮慎二/助監督:北浜雅弘

製作:オフィス北野/東通
配給:東宝



INTRODUCTION

 『その男、凶暴につき』『3-4x 10月』で観客にショックを与え、映画界にセンセイションを巻き起こした監督・北野 武の3作目。時代や風俗に迎合する事を拒否し、重く執拗な暴力シーンで人間を描いてみせた前作の衝撃的なバイオレンスからうって変わって、心にしみる珠玉のラブストーリーを完成させた。青年と少女の淡い恋がサーフィンを通して描かれる。湘南の海と空、はやりの外車に焼けた肌のサーファーたち、二人を囲むありふれた風景。しかし主人公二人にはこの定番をあざやかに裏切って、見る側をスクリーンに惹きこむ。
 映画の王道ともいえる恋愛ものに挑んだ北野監督の意欲は、この作品の企画、脚本、演出から編集も手がけ、まさに北野 武の映像作家としての真価を問うべく勝負を賭けた一作となった。
 主演は、自らもサーフィン大会出場の腕前をもつ真木蔵人。せりふは一切ない役柄だが、その存在感がスクリーンに独特の雰囲気をかもし出す。相手役の貴子には新人の大島弘子。音楽は『魔女の宅急便』『となりのトトロ』など映画音楽でも才覚を発揮する久石 譲があたる。主人公二人が聾唖者というだけでなく、余分なせりふや説明をおさえ、斬新な音と詩を思わせる映像が想像力をかきたて、情感豊かな世界をくり広げていく。
 声をかけ合うこともない二人の、けれどそっと心を寄り添わす。それは私たちが忘れかけていた男と女のかたちを、眩しいまでに純粋に映し出していく。そのイメージは切ないほどに鮮烈に胸に灼きつく。時にユーモラスに、時に淡々と、そして哀切なタッチを織り込んで、いつしかこの不思議な世界は、私たちをさわやかな感動と忘れられない余韻に包み込んでしまうのだ。



STORY
茂は生まれつきの聴覚障害で、清掃車のアルバイトをしている。茂の恋人の貴子も同じ生来の聾者であった。
 ある日、茂は、海岸脇のゴミ集積所にあった壊れたサーフボードになぜか心ひかれ、アパートに持ち帰る。ありあわせの材料でサーフボードを修理した茂は、早速貴子を連れて海辺に出かけた。
 茂は必死にサーフィンに挑戦するが、失敗の繰り返し。それを貴子は時々微笑みをうかべて眺めている。常連のサーファーたちにも笑われても、二人はお構いなしだ。
 こうして茂は毎日サーフィンの練習に明け暮れ、そんな茂に貴子も懲りずに、ただ海辺でじっと見守るのだったが、ある日、とうとうサーフボードが壊れてしまう。しかし茂は給料日をまって、新品を買うと、また海辺に通いつめた。スーツもつけずにサーフィンをする茂にサーフショップ店長の中島が、一着のウェットスーツとサーフィン大会の出場申込書を差し出した。
 そのサーフィン大会の当日。茂と貴子はじっと出番を待っていたが、そうこうするうちに大会は終ってしまう。自分の出番を告げるアナウンスが聞こえず失格となってしまったのだ。
 それでも茂のサーフィンへの情熱はさめるどころかつのるばかり、バイトさえも忘れるほどだった。また、常連のサーファーたちとも次第にうちとけるようになっていた。
 こうして2度目のサーフィン大会を迎えた。腕を上げた茂は、みごとに入賞し、サーファー仲間たちの祝福をうける。
 そして、夏が過ぎた。その時、思いもよらぬ一陣の風が二人の間をかけぬけていく・・・・・。




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