カンヌ国際映画祭'96監督週間正式出品作品

北野 武監督第6作

1996年7月公開


(C)1996 バンダイビジュアル/オフィス北野

CAST
金子 賢,安藤政信,森本レオ,丘みつ子,石橋 凌,寺島 進,山谷初男,下条正巳,大杉 漣,モロ師岡,芦川 誠,北京ゲンジ(お宮の松無法松) ほか

STAFF
監督・脚本・編集:北野 武/プロデューサー:森 昌行,柘植靖司,吉田多喜男/音楽監督:久石 譲/撮影:柳島克己(J.S.C.)照明:高屋 齋/美術:磯田典宏/録音:堀内戦治/編集:太田義則/助監督:清水 浩/記録:中田秀子/キャスティング:吉川威史/製作担当:山下秀治/製作管理:山崎義人/宣伝プロデューサー:照本 良

製作:
オフィス北野バンダイビジュアル
配給:オフィス北野
配給協力:ユーロスペース
協力:
東京テアトル



INTRODUCTION

 当日いきなりの台詞変更やアドリブは北野組ではフツー。スタッフはアセリながらも対応するが、俳優、しかも新人には大問題。演技歴では先輩の金子が「一瞬、頭が白くなった」のに対し、春にスカウトされたばかりの安藤の方は、「アセろうにもアセるモトがない」。
 これこそが北野 武の求めるキャスティング。佐野史郎、白竜、寺島 進、豊川悦司、とブレイクする前の“無色”の俳優たちを起用、彼らの“素”を最大限に引き出している。今回「(ふたり)並べると絵になる」という監督の動物的感覚でチョイスされた金子、安藤がいかにブレイクしていくか。物語の時間軸に沿って順撮りしていく北野演出の中で、変貌していく彼らの“素”を楽しんで欲しい。
 一見“今風”に見えるマサルとシンジが繰り広げるエピソード。北野 武はありきたりの“グラフィティー”の手法をとらず、時代性を明確にせず、現代でありながら現代でない・・・ そんな不思議な違和感の中に観客を巻き込んで行く。勝手気ままに生きているふたりは、ボクシングをきっかけに、初めて自分の意思で道を選び、生き生きと駆け抜けて行く。そうしてマサルはヤクザとなり、シンジはプロのボクサーを目指すが・・・。
 リスクが裏付けされない「自由」に対し、北野 武が用意した解答は冷酷なダメージだ。ダメージを受けたふたりと、彼らを取りまく人々を通して、北野 武は我々が「自由」と呼んでいるものの意味を問いかける。
 楽しく始まりながらも、結果、ズシッと手応えのあるヘビーな仕上がり。ここにまた一本、日本の映画界を刺激する、エンターテインメント作品が完成した。



STORY
 懐かしい顔をシンジ(安藤政信)は見つけた。高校時代の同級性マサル(金子 賢)だ。いつも、何するのも一緒。腕っ節の強いマサルが兄貴分で、シンジはその尻について歩いていた。
 あの頃、ふたりがいちばん熱中したのは自転車の曲乗りだ。シンジがハンドルに後ろ向きに乗ってペダルを漕ぎ、マサルが荷台にまたがって舵を取る。コツはふたりの息をぴったり合わせること。そうやって校庭に描いた軌跡のように、ふたりの道はいつまでも切れることなく続くとばかり思っていた。
 ふたりは二流進学校の落ちこぼれだ。それなりに自覚はあるが、担任(森本レオ)やほかの教師からお荷物扱いされれば気分はムカつく。だからマサルとシンジは自由気ままに振る舞った。なじみの喫茶店でまず一服。看板娘のサチコ(大家由祐子)に色目をつかうヒロシ(柏谷享助)にちゃちゃを入れ、気分が乗れば学校へ向かう。ほうきで作った "先公人形" を屋上から吊るし、キザな若手教師の自慢の新車を焼け焦げにしたり、暇つぶしのネタには困らない。といってもふたりは、弱い者いじめの番長グループにお仕置したりして、どこか普通のツッパリじゃない。
 冬、大学入試が近づき、授業もテクニック重視の実戦型に変わって、ハジかれる一方のマサルとシンジ。いつものようにカツアゲでメシ代を稼ぎ、いい気分で入ったラーメン屋で、ふたりは先客のヤクザ(寺島 進)に絡まれた。あわや喧嘩のところを貫祿でさばいた若頭(石橋 凌)に、マサルは尊敬の眼差しを浮かべる。
 ある夜、以前カツアゲした高校生から呼び出しがかかり、ふたりで指定の場所へ着くとスリムで小柄な若い男が現れ、次の瞬間マサルは左ストレートを食らって舗道に延びていた。呆然と立ち尽くすシンジ・・・。マサルが姿を消したのはその翌朝だ。取り残されたシンジは寂しくてたまらない。家を訪ねても、喫茶店にも、屋上にも、もちろん教室にも、マサルの姿はない・・・。
 卒業式の日、自転車置き場でシンジはマサルから声をかけられた。ハデな赤のジャージでシャドウ・ボクシング(本人はカッコいいつもりだろうが、腰が入らずサマになっていない)。自転車で伴走したシンジは、マサルに言われるままジムに入門した。
 数ヶ月後、シンジは前座戦でデビューを飾り、やがて挑戦者の資格を得た。会長(山谷初男)が、軽快なフットワークでジャブを繰り出すシンジを食い入るように見つめている。トレーナー(重久剛一)がまずシンジのセンスを見抜き、コーチが口説き、以来ジムをあげてチャンピオン候補に育て上げてきたのだ。ふたりを追って入門した番長グループが目に入るが、ジムにはどこにもマサルの姿はない。いつも後ろにつき従っていたシンジにランニングで追い抜かれ、遊び半分のスパーリングで鮮やかなカウンターを食らって以来、マサルは姿を消したのだ。
あの時会ったヤクザの世界に飛び込んでいたのだ・・・・・



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