撮影現場より

撮影は'98年7月19日から9月25日まで約2ヶ月半。監督のスケジュール上撮影は1週間おきの順撮り。日本映画の制作ではとても恵まれている条件ではあるが、どんな現場も苦労はつきもの。今回の北野組は天気に悩まされたが、そこはスタッフの腕の見せどころ。菊次郎と正男が立ち寄る競輪場で、正男が大穴を当てるシーン。撮影は屋内とはいえ、外は朝から大雨。監督が現場に到着するまでには、大小さまざまな照明機材があっという間に準備され、無事撮影開始。現場慣れしてきた正男こと関口雄介君からもアドリブが飛び出し、監督、スタッフも思わず吹き出してしまうが一発OK! 本編では見事に晴れた、夏の日の1コマに仕上がっている。 今回、北野組の撮影現場には『おかえり』でデビューし、海外でも高い評価を得ている篠崎誠監督が、メイキング・スタッフとして参加。2台のデジタルカメラをたずさえ、クランク・イン前の打合せ段階から、本編の撮影風景、音入れなど北野武監督を中心に撮影。徹夜続きの編集作業をこなし、1つの作品が仕上った。本編の裏側がたっぷりつまった魅力的な作品を、乞うご期待。

 

タイトル「菊次郎の夏」について

主人公・菊次郎のネーミングは、監督の実父・菊次郎さんからとったもの。しかし、監督から見た菊次郎さんの存在というのは、小さい頃は「おやじがいると一気に家庭が締まる」存在だったが、「最近になって、孤独だったんだって思うようになった…。自分の思っていることを素直に出せないだけ。」 だからこそ家族で夏休みを楽しく過ごすことはしないし、できない、そんな不器用で照れ屋な男性の代表として名付けたのだ。 映画の中では、正男の旅のお供だったはずだった菊次郎が、自分の夏休みを楽しんでしまうわけだが、その楽しみ方の半分は、父親と過ごした遠い夏の日の想い出で、残りの半分は望みながら果たせなかった夢の現実として描かれている。

 

天使の鈴

『キッズ・リターン』『HANA-BI』に続き、この『菊次郎の夏』でも天使が登場する。劇中"天使の鈴"のデザインは、クマさんこと篠原勝之氏が担当。北野武の絵に描かれる"天使"を元にガラスで製作。清涼な音色を響かせる愛らしい作品だ。実は北野武は"天使マニア"!! アトリエを兼ねた自室には天使グッズを飾り立てたコーナーがある。

 

 

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